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賃貸不動産の贈与時の注意点

2020.02.10

皆様はじめまして。
今回より執筆を担当させて頂くことになりました税理士法人アーリークロスの小山と申します。

相続、不動産に関わる税金についてなるべく噛み砕いてお伝えできるよう努めて参りますのでよろしくお願い致します。

 

1.相続対策と負担付贈与
不動産オーナーの相続対策の一環として、子へ生前に賃貸不動産の建物を相続時精算課税制度を使って贈与する場合があります。

賃貸不動産を生前に贈与すると、贈与税及び流通税(不動産取得税、登録免許税)がかかるとしてもその不動産収入は建物の名義人に帰属することになります。

したがって贈与後の不動産収入を子供に帰属させることで財産総額の増加を抑制することが可能となります。また、子供はその不動産収入によって将来の納税資金を貯めておくことができます。逆にいうと、相続対策を行いたい方が賃貸不動産を持ち続けることによって財産総額が当然に増加していくこととなり、納税資金の面でも不安が残ることになりかねません。

では、相続対策として賃貸不動産を生前贈与した時の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
 

2.賃貸不動産を贈与する時の注意点
賃貸不動産を贈与する際に気をつけなければならないのが「負担付贈与」とならないようにすることです。

負担付贈与とは一定の債務を負担させることを条件とした贈与をいいます。賃貸不動産にはローンなどといった「債務」が付いている可能性が大いにありますので注意が必要です。

①贈与税の計算
負担のない賃貸不動産の単純な贈与の場合は、財産評価基本通達に基づき相続税評価額にて贈与税を計算することになります。

しかし、負担付贈与を受けた際の贈与税の計算は、贈与財産の時価から負担額(債務)を控除した金額に贈与税がかかることになります。

この際の時価とは、収益物件など不動産については相続税評価額ではなく、売買実例価額などを参考とした通常の取引価額となりますので一般的に贈与税が多額になることが予想されます(相法9、相基通9-11、21の2-4)。

②所得税が課税される
贈与した親は債務の負担がなくなりますので、借入金相当額で売却されたとみなされます。その際の譲渡所得の計算方法は、借入金の残債から不動産の取得価額を差し引いた金額に税率をかけて計算することになります。

なお、借入金の金額が時価の2分の1未満であるときは、譲渡損失はなかったものとみなされ、他の譲渡所得と損益通算することができません。

 

3.負担付贈与の回避策
賃貸不動産に借入金がついてない場合、「負担」は付いていないと考えがちになりますが1つ注意しないといけない点があります。
それは借主から預かっている「預かり敷金」です。

賃貸中の建物の所有権の移転があった場合には、旧所有者である親に差し入れた敷金がある限り、たとえ親子間に敷金の引継ぎがなくても、賃貸中の建物の新所有者である子どもは当然に敷金を引き継ぐ(判例・通説)とされています。

つまり、賃貸不動産の贈与を受けた子供からすると敷金という債務を「負担」していることになります。

この場合は借入金がなくても敷金を負担していることになるので贈与税の計算、譲渡所得税の計算の際に負担付贈与として計算することになります。

この負担付贈与を回避する方法としては、預かり敷金相当額の現金を賃貸不動産建物と一緒に贈与すればそれは負担がなかったとされますので、通常の贈与と同じ計算方法になります(国税庁:「賃貸アパートの贈与に係る負担付贈与通達の適用関係」参照)。

4.まとめ
本稿では賃貸用不動産の贈与時の注意点を課税関係の視点よりまとめてみました。

不動産オーナーの方はローンを組まれている方及び敷金を預かっている方が大多数かと思いますので相続対策の一環として建物だけを贈与する際には思わぬ税負担が生じかねませんので十分注意が必要となります。

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筆者紹介

税理士法人 アーリークロス 副代表 相続・承継支援部長
小山 寛史

学歴 関西大学卒業 西南学院大学大学院卒業

国内最大手税理士法人にて資産税、事業承継案件を経験した後、国内中堅税理士法人にて資産税、事業承継、法人顧問など幅広く業務を経験。 税金面のアドバイスはもちろんのこと、クライアントの「想い」に寄り添った提案を心がけている。 特に不動産オーナーの相続対策については、「評価額圧縮」「遺産分割対策」「納税資金対策」「生前贈与対策」の4つの柱を軸に円満な相続ができるよう偏りのない総合的なアドバイスを行っている。 不動産オーナー向けのセミナーも多数開催。

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