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★2022年3月更新版★不動産の共有物分割について更新

2019.10.10

親が亡くなって住宅を相続する際に、とりあえず法定相続分に応じて共有名義で相続登記をする場合があります。しかし、後になって相続人のうちの一人が生活費に困るなどして、「共有名義の不動産を売却したい」と言い出すことがあります。そういった場合、共有名義の不動産の任意売却は可能なのでしょうか。

自分の共有持分だけを売却することは理論上はできますが、一般的な不動産売買で共有名義の住宅を購入したがる人はいないので、任意売却をするのであれば、他の相続人の同意を得て、共有名義を解消して単独所有にしなければなりません。このことを「共有物の分割」といいます。

その方法は、協議による場合と裁判による場合があります。まずは共有者全員で共有物分割協議をし、自己の共有持分を他の共有者に買い取ってもらったり、共有者全員が一丸になって第三者に売却することができれば良いのですが、どうしても協議が整わず、不動産を処分できないときの最終手段として、裁判所に共有物分割請求を訴えることができます(民法258条1項)。これを「共有物分割訴訟」といいます。

共有物分割訴訟提起の要件として、「共有者間に協議が調わない」というのがあるので、訴訟提起の要件を備えるためにも、最初に共有物分割協議をする必要があります。共有物分割協議を行う旨を、内容証明郵便で共有者全員に送付すれば、例え相手方が話し合いに応じてくれなくても、こちらから申入れをしたという証拠が残ります。

協議による分割には、以下の三つの方法があります。

①現物分割

例えば、AB2人の共有する1筆の土地を、A土地とB土地の2筆に分筆し、AがA土地を、BがB土地を取得する方法です。



現物分割は、100坪程度の広い土地であれば、AとB二人で分筆しても50坪程度なので十分利用価値がありますが、40坪程度の土地であれば、分筆すると20坪程度となってしまい、狭くて使い道がなくなってしまうというデメリットがあります。
 

②換価分割

例えば、AB2人の共有する1筆の土地を第三者に売却し、AとBとでその売却代金を分けるという
方法です。

③代償分割

例えば、AB2人の共有する1筆の土地をAが単独で取得する代わりに、AがBに対してBの取り分についてそれ相応の金銭を支払う方法です。

上記のように物理的な分割も難しく、他の共有者が任意売却に応じてくれない場合には、裁判所に共有物分割訴訟を起こすことができます。裁判所の方で、①現物分割、②換価分割(競売)、③代償分割のどれにするか決めることになります。

裁判による分割については、原則的には「現物分割」の方法をとります(民法258条2項)。しかし、分割できない不動産であった場合や、分割によって著しく価値が下がってしまう場合は、代償分割を検討し、最終的に裁判所は「競売」を命じます。

裁判において代償分割の方法が採用されるためには、土地の取得者の支払い能力も大きなポイントになります。代償金は通常一定期間内に一括で支払うことが条件とされています。代償金を支払えるかどうかは、預貯金や金融機関の融資証明書などで確認され、判断されます。

競売では、希望の金額で売却できるかというと難しく、任意売却の金額より7割程度金額が低くなってしまいます。そのため、裁判内で和解をし、任意売却を行うことにより、競売よりも有利な条件で不動産の売却をされることをお勧めいたします。
 

最後に

相続が発生し、相続人が複数いる場合は、分割割合が確定するまでは一時的に相続人全員の「共有」状態になります。共有物分割協議で話がまとまれば共有状態は解消されますが、何もせずにほったらかしにしていると、共有状態のままになってしまいます。共有状態では、誰が不動産を管理・占有するか、固定資産税などの負担をどうするか、独占的に使用している共有者に対し、使用料を請求できるかなどの諸問題が生じる可能性が高くなります。


共有者同士が兄弟や親子など関係が深く、コミュニケーションがとれているうちは良いのですが、例えば、相続財産である実家を兄2分の1、弟2分の1で共有して相続したとします。その後、兄が病気で死亡し、再度相続が発生し、兄の法定相続人は配偶者と子2人だった場合、兄の2分の1の実家の持分を兄の配偶者(法定相続分2分の1)、長男及び次男(法定相続分各4分の1)の割合で相続したとします。すると、実家という一つの不動産に対して共有者が弟(持分2分の1)、兄の配偶者(持分4分の1)、兄の長男及び次男(各8分の1)の4人に増えてしまいます。

このように、他の共有者が死亡して相続人が細分化されて共有者が芋づる式に増えてしまうと、共有状態の解消は難しく、売却するにも困難な不動産となってしまいます。

このようなトラブルを防止するには、共有者が少ないときに共有状態を解消しておくか、当初から不動産の共有はできるだけ避けた方が良いでしょう。



 

筆者紹介

柳沢 賢二
柳沢法律事務所
弁護士

一、弁護士として、依頼者のために、一つ、一つの案件について、専門家としての①専門性の高いサービスを、②迅速に提供することを心がけています。そして、常に依頼者のために、一つ一つの案件を全力で取り組んでいきます。

二、今、高齢者社会において、相続の問題は誰もが直面する重要な問題だと思います。今までの自分の人生の集大成を納得のいく形で終えれるように、残された家族の方々が困らないように、専門家として皆様の力になれる適切な解決方法の提案やアドバイスをしていきたいと思います。

三、相続の分野でも、紛争後の裁判所での訴訟業務だけでなく、紛争を事前に防ぐ予防法務的な視点から、遺言書の作成、任意後見・成年後見の活用、事業承継のアドバイスなどにも力をいれ、皆様の力になれるアドバイスをしていきたいと思っています。

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