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公正証書遺言なら大丈夫?

2016.02.10

当センターでは「公正証書遺言」を作成することをおススメしています。しかし「公正証書遺言」であれば全て大丈夫なのかというと、決してそうではありません。

重要なのは、「遺言書の内容・書き方」です。

 

公正証書遺言を作成するためには「公証役場」に行く必要があります。公証役場は「お役所」ですので、直接行けばいろいろなアドバイスが受けられ、完璧な遺言書が作れると思われるかもしれません。

しかし、あくまで公証役場は遺言書を「作成する」場所。もしも様々な問題点がある遺言書だったとしても、公証役場の窓口や公証人から必ずしもアドバイスがあるとは限りません。遺言書を書く方が「そうしたい」と言えば、そのとおりに書面に書き起こし、作成するのが基本だからです。

 

たとえば、こんな遺言書

 

たとえば、あるお父さんが、公証役場でこんな遺言書を作成したとします。

(実際に、作成できてしまいます)

 

(家族構成)

妻:同居

長男:既婚(妻・子ども2人)・同居

長女:既婚(夫・子どもなし)・別居

次男:独身・別居

 

(相続税)

かかる(法定相続分どおりに相続した場合) 

不動産(自宅および賃貸アパート):相続税評価9000万円 その他:現金3000万円 

 

(遺言書の内容)

① 不動産(自宅および賃貸アパート)は、妻・長男・長女に均等に相続させる。
② その他(現金など)は、妻に相続させる。
③ (次男に相続させるものはなにもない)

よくあるような内容と思われるかもしれません。

しかし、このような内容にしてしまうと、せっかく遺言書を書き残したのに、様々な問題を後世に残すことになります。

 

皆さん、上記の遺言書の何が問題なのか、お分かりになりますか?

 

 

問題点①:不動産の共有=「狂憂」

 

一つ目は、「不動産の共有」特に「兄弟姉妹共有」になってしまうような内容になっていることです。

 

相続をよく勉強していない方は、「不動産の共有」の恐さが分かりません。ただ「平等にしたい」とか「持ち合っていれば仲たがいもできないだろう」などの理由で、安易に不動産共有になるようなわけ方をしてしまうことが少なくありません。

 

不動産は、絶対に共有にするべきではありません。

共有は「狂憂」という当て字が使われるそうです。狂うほど憂鬱なものになります。

 

上記のケースの場合、長女には子どもがいません。遠い将来、長女の持分は、長女の夫やその兄弟に受け継がれていくことになります。もし子どもがいたとしても、長男の子どもといとこ同士での共有です。そのような多人数で共有している不動産は、収益を生みづらく、処分もなかなかできません。長く後世に禍根を残すことになります。

 

問題点②:相続税が払えない

 

二つ目は、相続税の支払いのことを考えていないことです。

 

上記の内容では、長男・長女が相続するのは不動産のみで、現金はすべて妻にとなっています。この場合、長男・長女はそれぞれ240万円の相続税(※概算)を払う必要があります。しかし、受け取る財産は不動産のみですので、自分の貯金から相続税を払うしかありません。

 

遺言書を作成する際は、相続税の考慮は必須です。事前に専門家に必ず確認しましょう。

 

問題点③:次男の遺留分】

 

三つ目は、次男の遺留分が考慮されていないことです。

 

相続人の誰かの遺留分を侵害しているからといって、遺言書がただちに無効になると言うことはありません。しかし、遺留分は遺言書よりも強い権利です。せっかく遺言者が「揉め事が起きないように」と書き残した遺言であるにもかかわらず、それが原因で「争族」が勃発してしまうこともありえます。

 

遺留分を無視した遺言書は、できるだけ避けることが望ましいです。

 

そんな遺言書でも公証役場で作れてしまう

 

最初にも申し上げましたが、公証役場はあくまで公正証書遺言を「作る」場所です。

「自分の思い」を書き残すものですから、思うように書いて頂きたい…のは確かです。

しかし、せめて「法律的にも」「税金的にも」問題がないかどうか、残された家族が逆に困るようなことにならないか、事前に相続に詳しい専門家に確認してから公証役場に向かいましょう。

 

福岡相続サポートセンターでは、遺言書の作成に関するアドバイスや相続税の試算などを随時行っております。ご心配な方は、いつでも当センターまでお問い合わせください。

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筆者紹介

高橋 大貴
福岡相続サポートセンター
相続コーディネーター

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